小売・流通業へのAI導入が行われたある企業の事例で、ファクト・データの蓄積、解析により、従来より高かった壁面を低くしたことにより、通路を通る人からの認知度がアップし、お客様の来店数、そしてフックコーナーへの立ち寄り率が大幅に増えたことが確認されました。店舗内の見える化に伴い、フックコーナーへの立ち寄り率が大きく増大しています。同時に、思わぬ副次的効果もありました。店内の回遊時聞が増えたためか、フック商品以外の売上もフックに負けずにアップしたことです。このような「ついで買い」の増大も手伝って、導入企業では前年比で10ポイント~15 ポイン卜増という、目に見える売上改善をはたしました。このことから、壁の高さを低くしたことで、①新規顧客層を店内に取り込めたこと、②10ポイント以上の売上アップがあったことがデータから裏付けられました。次に、お客様にできるだけ店内を歩いてもらう (回遊)ための「売場づくりの実験」が行われました。回遊時間を長くすることで、「衝動買い」や「ついで買い」の促進も狙いました。そこで、同店が中心として販売している製品等の店内レイアウ卜を大きく変更してみました。3つあった中心的製品のうち、一つは変更せず、残り2つの位置を手前から奥に変えてみたところ、変更前の回遊率が製品Aが5.7%、製品Bが7.1%だったものが、変更後はそれぞれ9.5%、12.5%へと上昇していました。しかも、店内の奥に置いたことで途中のコーナーに寄り道して「ついで買い」するお客様も増え、売上も上がった(商品は以前と同じ)という結果です。「どこに何を置くと、販売効率が上がるか」という貴重なデータが取れたのです。なお、エリアによるお客様の特性も確認できました。若い人が多く住んでいる地域では、本格的山歩きというよりも、街の中でも着られるタウンユースのアウトドア商品が購買のフックになります。知名度のある商品を置いたところ、ふつうの若者が「お、いいな」と店に押し寄せ、入店率も購買率も上がりました。従来の山歩き派の人々の購入パターンに関しても、改めてわかったことは、本格的な登山用リュックなどを求めて来る人は、予想通りリュック売場に直行し、そのままレジへ向かう傾向があるということです。やはり 「目的買い」だったようです。とすれば、登山用コーナーを店舗のいちばん奥へ持っていき、そのそばに関連グッズを並べて「ついで買い」を狙う、あるいは、奥のコーナーからレジまでの間にできるだけ店内を回遊してもらえるように商品を配置し、さらに購買につなげるという施策も考えられます。ファクト・データをもとにしてマーチャンダイジング施策の検討や立案が進むようになったのです。